前田拳太郎 あざとさ×かっこよさ ギャップの秘密を覗く

作品が変わるたびに新しい一面を見せる俳優・前田拳太郎。男前な顔立ちとすらっとしたスタイルを活かし好青年役から硬派な役まで演じ分け、さらに抜群の運動能力でアクションもこなす。今回の撮影でも、まるで役ごとに顔を変えるように多様な表情を見せてくれた。そんな役者然とした印象をいい意味で裏切るほど、素の彼はまた違う魅力を見せる。人懐っこくて、少年のようなまっすぐな性格。そのギャップに出会う者は引き込まれる。それは例えるなら、「あざとかっこいい」。そんな彼をゆっくりと深掘りしてみた。


─ 撮影はいかがでしたか?

ちょっと大人っぽくて、いつもとは違う自分になったんじゃないかなと思います。僕、普段からプライベートでもメイクするんです。ファンデーション、アイシャドウ、アイラインと、一通りやっています。最近は、アイラインは長ければ長いだけいいかなって思っています(笑)。まつげを埋めるのが苦手なんですけど。目尻は筆で描いて、隙間をペンシルで埋めています。シャドウの色はその日によって変えるんですけど、ブラウン系が多いです。最近はちょっと青系というか紫っぽいのにハマっています。

─ メイクをするようになったきっかけは

大学時代、社交ダンス部だったんですけど、大会ではわりと普通にメイクして出るんです。だから、僕にとっては当たり前のことだったというか。男でもメイクするのが普通だったので、特にハードルはなかったですね。

─ 美容ルーティーンやこだわりはありますか?

メイクする前には、ちゃんと美顔器で美容液をしっかり浸透させています。夜もだいたい美顔器を使っています。そうすると朝も乾燥しにくいんですよね。美顔器にはいろんなモードがあって、毛穴ケアのモードとか、シワ対策のモードとか。アプリと連動していて1週間ごとのルーティーンを教えてくれるので、ビジネスマンにもおすすめです。

─ 同世代の中でもかなり美容意識が高い方かと思いますが、友達と美容の話や情報交換はしますか?

確かに結構高い方だと思います。男友達とはほぼしなくて、女友達には聞いたりします。たぶん、僕がいちばんちゃんとしていると思いますが(笑)。男友達は一緒にサウナに行っても、洗顔だけで済ませようとしているのを見ると「待って! ちゃんとクレンジングしな!」って言っちゃいます。彼らはメイクしていない日でもクレンジグはした方がいいなんて、知らないと思います。

─ 香りのこだわりはありますか?

香水は結構いっぱい持っていて、ジャスミンや、ピオニーなどお花系や甘い系が多いです。渋めのタイプや、いかにも男性用という感じの強い香りはあまり選ばないです。この前フレグランスを作りに行ったんですけど、それも甘めにしました。家ではジャスミンのお香を炷くこともあります。

─ やってみたい髪型はありますか?

黒髪ロン毛! 昔からずっとやってみたいんですよ。空手をやっていた時は坊主でしたし、社交ダンスも髪型に制限があって、この仕事を始めてからも役があるからなかなかタイミングが難しくて。カラーは学生時代に金髪、赤、紫、白と一通りやって、最終的に黒髪に落ち着きました。結局黒髪がセクシーですし、いちばん似合うなって。なので、黒髪&ロン毛のちょっとやさぐれた感じの雰囲気、いつかはやりたいんですよ。僕もいい歳になってきましたし、もうそろそろキラキラキャラは卒業でもいいかなって(笑)。

─ 前田さんの魅力は、かわいさとかっこよさが共存していることだと感じるのですが、ご自身ではどう思われますか?

ありがとうございます。どうだろう、確かに人に言っていただくのは半々くらいですかね……。かわいいかはわからないですが、自分では目が茶色いところと口元のほくろ、あとギザ歯もチャームポイントで気に入っています。逆に体は筋トレをしてたから首周りとかガタイが良くて、その辺りが男っぽいんですかね? ただ最近は、マネージャーさんに「筋トレしないで。これ以上大きくならないで」って言われています(笑)。

─ すぐに筋肉がつくタイプですか?

実はそこまでつきやすいタイプではないんですけど、一度つくった体には “マッスルメモリー” ですぐ戻れるんです。でも、そこを超えてもっと大きくするには、めちゃくちゃ食べたりしないと難しいですね。例えば、僕が出ていたドラマ『PJ~航空救難団~』の時の体だったら、数カ月で戻せると思います。でも、それ以上を目指すとなると、相当追い込まないと厳しいです。

─ 自炊はされますか?

最近はしてないですね。でも僕、ブームがあるんですよ。自炊ブームが来るときは、毎日のように作ることもあるし、逆に1年くらい全く作らないこともあります。作る時期は、ローストビーフとかも家でやりますし、友達が来た時は7品とか作ったこともあります。いちばん得意な料理はパスタです。父がイタリアンのシェフなので、子供の頃から教えてもらいながら、一緒に作ったりしていました

─ 空手で全国大会に出て優勝されたことがあるほどの実力者ですが、役者の道に進まれたきっかけは?

僕は小さい時に空手を始めて、中学では全国大会を目指して、中学3年の時に優勝することができましたが、ずっと空手を本気でやっていたので、勉強はあまりやらないで過ごしてしまって。このまま空手しか知らない人生はやばいかなと思って、大学では新しいことを始めようと思ったんです。元々高校を卒業したら役者をやろうと思っていたので、一度コンテストみたいなのを受けたんですが落ちちゃったんです。それで諦めちゃって、大学では全国上位に行くような社交ダンス部に入ったのでそこでも部活に打ち込んでいたのですが、コロナ禍をきっかけに部活ができなくなって、「なんかしなきゃな」と思って、就活もしたんですけどやりたい仕事が全然見つからなかった。だったらもう一回、役者を目指してみようって決めました。コロナ禍でいろいろと考える時間ができたので、そのおかげで踏み出せましたね。

─ 空手や社交ダンスが、俳優業に役立った部分はありますか?

空手と社交ダンスって、意外と近いものが多いと思います。どちらも、体幹が本当に大事であるとか。社交ダンスは見栄えを競うスポーツなので、空手の型と似ている部分があったり。それが、“魅せる”という意味で役者業に活きている部分はあるかもしれません。でも僕、逆に姿勢が良すぎて普通の人を演じるのが難しかったりします。ランウェイも難しい。どうやら僕、歩くのが下手らしいです(笑)。

─ 今後やってみたいお仕事は?

いっぱいありますけど、社会派っぽいというか、重めなテーマの作品に挑戦したいなと思っています。もうすぐ26歳になるので、自分自身が大人になってきたこともあって、人間の複雑さとか、深みのあるキャラクターに惹かれます。

─ 映画『栄光のバックホーム』の撮影はいかがでしたか?

大変でした! 僕、野球が本当にできなくて。空手部あるあるなんですけど、球技が全くダメで。練習外の動きとか急な展開が多くて、難しかったです。主演の松谷鷹也さんとずっと一緒に、手の皮が全部剥けるくらい、マメでベロンベロンになりながら練習していました。鷹也さんは何年も前からこの作品の準備をしていたので、その想いにすごく心を打たれて、僕も真剣に取り組んでいました。

─ 実話を演じるうえで、ハードルは感じましたか?

今を生きている方たちをモデルにした物語だからこそのハードルはすごくありました。映画ってあくまで脚本があるなかでの表現なので、その人をそのまま真似するだけだと“モノマネ”になってしまう。それだと物語としてどうなんだろうって。そこの塩梅が本当に難しかったです。僕は関東出身で関西弁をしゃべったこともないですし、野球もやったことがない。公開されたら、いろんな意見があると思います。ご本人も観るだろうし、応援されていたファンの方々もたくさんいる。いい意見もあれば、もちろん悪い意見もあると思います。でもそれでも、この作品をやりたいって心から思えたので、精一杯向き合ってやらせてもらいました。僕の演技にはつたない部分もあると思うんですけど、“こういうことが実際にあったんだ”ということを、たくさんの方に知ってもらえたらという気持ちです。野球が題材ではあるんですけど、そこにこだわらずに、老若男女幅広い方に響く作品になっています。スポーツをやっていた方だったら共感できる部分は多いと思いますし、そうじゃなくてもきっと多くの人が胸を打たれるんじゃないかな。スタッフのみなさんにとってもチャレンジが多い現場だったと思うので、本当にたくさんの方に観てもらえたら嬉しいです。

前田拳太郎

1999年生まれ、埼玉県出身。2021年に『仮面ライダーリバイス』(EX)で主演を務め、一躍注目を集める。以降、『女神[テミス]の教室~リーガル青春白書~』(CX)、『君には届かない。』(TBS)など話題作に出演し、着実にキャリアを重ねる。2025年11月28日公開の映画『栄光のバックホーム』(秋山純監督/ギャガ)では、プロ野球選手・北條史也役に挑戦。空手と社交ダンスで培った身体表現を武器に、繊細さと力強さを併せ持つ演技で魅了する。


Photography: YOSHITAKE HAMANAKA
Hair & Makeup: KATO @TRON
Styling: HARUKI UCHIYAMA @TRON
Edit & Interview: YUKA ENOMOTO

こちらの情報は『CYAN MAN 2025年10月号』に掲載された内容を再編集したものです。