誰もを惹きつける美しさ 奥野壮が語る“好きなこと”

中性的な柔らかさと凛とした雰囲気を併せ持ち、演技派として存在感を放つ俳優・奥野壮。スタッフとラフに談笑し現場を和ませてくれつつも、カメラの前に立てば一変して鋭い眼差しを向ける。インタビューではユーモアを交えながらも真面目な一面を見せ、大事なことは、楽しむこと、そしてコミュニケーションだと語る。きっと彼は、仕事に対しても、趣味に対しても、人間に対しても、自分にとって好きなところを見つけるのが得意なのだ。そしてそれがポジティブに生きていくうえで、いちばん肝心なのだと教えてくれる。


─ 撮影はいかがでしたか?

メイクする男の子って、最近増えているじゃないですか。だから、こういう雑誌があって、プロが「これがいいんだよ」とちゃんと見せてくれるのがすごくありがたいなと思います。僕自身は普段あまりメイクをしないのですが、衣装を着てメイクをしてもらうことで仕事のスイッチが入ります。僕、メイクしてないと腑抜けた顔してるんですよ(笑)。メイクをするとシャキッとしますし、自信にもなります。だから普段メイクをしない人たちにもこの感覚を知ってもらえたら嬉しいですね。

─ 美容ルーティーンやこだわりはありますか?

最低限のスキンケアはしていますが、こだわりはあまりないです。ただ洗顔は、重たい泡がたぶん合わなくて、シャバシャバで粗い泡のものを使っています。たぶん、重たい泡だと皮脂が取れすぎてしまって、泡と言えない泡くらいのものが肌にすごく合っています。

─ 自炊はしていますか?

します! 以前、料理人の役をやっていた時に興味が湧いて、いい包丁を購入しました。包丁の良し悪しなんて全然わからなかったんですが、形から入るって大事ですよね。それまでも料理はやっていたのですが、テンションが上がるし、やる気になります。メイクも同じかもしれないですね。知らないだけで「何を買えばいいかわからない」という人はまだまだ多いと思います。やりたくても「何から始めればいいの? スキンケアって何?」みたいな層は絶対いるんじゃないかと。僕は身近にプロがいるので気軽に聞けますが、最近はSNSなど情報が溢れているので、まずは触れてみることから始めるのが大事だと思います。

─ 最近、カメラにハマっているそうですね!

そう、一眼レフカメラも全然詳しくないけど、周りがみんな持ち始めていて羨ましくて流されるように数カ月前に買ってみて、ちゃんとハマっています! お仕事上、プロの方たちが集まる現場にいるので、困ったらカメラマンさんや照明さんに聞けますし、役者仲間とかどの角度を切り撮ってもかっこよくなる。一気に上手くなっている感じがして大変ありがたいです(笑)。

─ ハマると突き詰めるタイプですか?

熱しやすく冷めやすいタイプなので、何事も続けないと、と思っています。僕は元々クラシックバレエを11年間ほどやっていて、毎日続けることで上達したり、できなかったことができるようになるのがすごく楽しかったんです。お芝居も毎日やっていくうちに自分のなかで洗練されていく感覚が好きなんです。

─ 役者を始めたきっかけは?

父が勝手に『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』に応募したのがきっかけです。当時、クラシックバレエをやめたばかりで、ずっとプロのバレエダンサーを目指していたのにやめてしまって、何もやることがなくなっていました。喪失感みたいなものがあって、なんにも手をつけられなかった時期です。その時に父が「こういうのいいんじゃない?」と勧めてくれて、軽いノリで「いいんじゃない?」って返したら本当に応募されてしまい、「じゃあ、やります」みたいな感じでした。

─ そんななかデビューが決まり、最初の作品は『仮面ライダージオウ』でしたが、思い出はありますか?

僕は中学生くらいの時に結構パンチの効いた反抗期を迎えたタイプで親は結構大変だったと思いますが、この仕事がまっすぐにさせてくれたと思います。社会ってこういうものなんだ、ということを教えてもらいました。お芝居の面でもそうですが、現場での姿勢や振る舞いの正解みたいな指標をくれたのが『仮面ライダージオウ』の現場でした。どんな仕事でも斜に構えず、素直でいることが大事。それは今でも自分の根っこにあって、ずっと土台になっています。

─ 今後やってみたいことはありますか?

音楽を始めたいので、もし楽器を演奏する役が今後来たらプライベートでも始めちゃうかもしれません。ゴルフやカメラや料理など、役から影響を受けたことが多いんです。そういう自分が経験したことがないものに出合えるのは、役者冥利に尽きるというか、とてもラッキーだなと思います。しかもやるとなれば負けず嫌いなところがあって、プロまでは及ばなくても素人に毛が生えたくらいまではやりたい。だから仕事だとなんでも前のめりになっちゃうので、結果プライベートまで続く可能性が高いです(笑)。

─ 40〜50代になったら、とんでもなく趣味の幅が広がっていそうですね。

恐ろしいですね。いろんなところにお金使ってそうで(笑)。

─ 今後、やってみたいお仕事は?

映像作品は常日頃言っているんですけど「なんでもやりたい」と思っていて、ジャンルレスに、恋愛ものやハートフルなもの、ホラーやサスペンスもなんでもござれという感じです。舞台だと、ストレートプレイをやってみたいし、ミュージカルも好きなのでやっていきたい。舞台の経験はまだミュージカル1本しかなくて、だからまだ舞台の面白さに迫れていない部分はあるなと思っています。

─ ご自身のなかで大事にしている考え方はありますか?

「楽しむこと」ですね。あまり考えすぎないようにしています。家では考える時間があっても、現場ではあまり考えず楽しむことをいちばん大事にしています。自分が楽しくないとやめちゃいそうなので。あとはコミュニケーションも最近すごく大事にしています。周りの人と仲良くなりたいです。現場であまり話さない時もありましたが、やっぱり話した方がプラスになることが多いので、友達いっぱい欲しいなと思っています。

奥野壮

2000年生まれ、大阪府出身。2017年に『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』でフォトジェニック賞と明色美顔ボーイ賞をダブル受賞。翌年、特撮ドラマ『仮面ライダージオウ』(EX)で主演・仮面ライダージオウ/常磐ソウゴ役として俳優デビュー。クラシックバレエで培った繊細かつしなやかな身体表現を武器に、多様な役柄に挑みながら確かな存在感を放つ、若手実力派俳優のひとり。


Photography: KAI NAITO @TRON
Hair: TAKAKO KOIZUMI @HITOME
Makeup: KANA OHIRA @beauty direction
Styling: NOBUYUKI IDA
Edit & Interview: YUKA ENOMOTO

こちらの情報は『CYAN MAN 2025年10月号』に掲載された内容を再編集したものです。