美容領域から地方創生へ クロノシャルムの軌跡を辿る

TIME TO KNOW CHRONO CHARME

類を見ないコンセプトを掲げる、次世代のライフスタイルブランドとして注目を浴びているCHRONO CHARME(クロノシャルム)。なぜ生まれたのか? これからどこへ向かうのか? 知れば知るほど興味と期待が湧いてくる。


美容業界に新しい風を吹かせる

ファウンダーの田中誠太朗氏は、地元北海道から上京し、美容師やヘアメイクとして美容業界でのキャリアをスタートさせた。

「Reno Beautyとして会社を立ち上げたのは、2015年。当時フリーランスで受けていたヘアメイクや美容師としてのお仕事を円滑にするため、マネジメント事務所という形でスタートさせたのが始まりです。ただ、ヘアメイクや美容師としての仕事にとどまらず、地方創生に繋がる事業をしたいという思いはすでに抱いていました。革新的な取り組みへの意欲は、“ビューティ分野にRenovation” をという意味を込めたReno Beautyという造語的な社名でも表していました」

田中誠太朗氏_Reno Beauty 代表。ライフスタイルブランド『クロノシャルム』ファウンダー。都内のヘアサロン勤務後、メイクアップアーティストとして活躍。プライベート型会員制ビューティサロン『Reno 801』も手がける。

まずReno Beautyを代表する革新的な事業といえば完全会員制サロン『Reno 801』である。

「私自身が、邪道なことを好む、性格が曲がった人間というのもあるのですが(笑)、本質は捉えていながらもひとクセあるようなアイディアを常に考えているタイプです。大手サロンで美容師をしていた頃は、とにかく一日に何人ものお客様を相手にするのが当たり前でした。その後六本木のサロンで働き始めると、経営者の方やその奥様、タレントの方などがお客様となり、求めるものが変わったと感じるタイミングが訪れました。より丁寧で親密な接客や経験に対価を払いたいというお客様が多かったのです。この経験が、会員制サロンへとシフトしていくきっかけとなりました。今でも施術中のプライバシーが守られているという意味での個室型プライベートサロンは存在していても、一部屋に席がひとつで、年間で契約していただくことによって、プライベートな体験ができるサロンは他にないのではないでしょうか。我々のサロンは、まずゲストの“時間”を大切に守る。この“時間”というひとつのキーワードは、クロノシャルムのコンセプトにも通じていきます」まさに、フランス語のCHRONO(=時間)とCHARME(=魅力)を合わせたブランド名には、手に取る人の時間を豊かなものにしたいという思いが反映されている。

ビューティプロダクトから地方創生を志す

では、サロンでのサービスの提供から、クロノシャルムというブランドを通してのプロダクトの提供へと広がりを見せたきっかけとは何だったのか?

「やはり、地元北海道に自分が身を置く美容分野から、何かを還元したいという気持ちが大きかったんです。ただ、北海道に戻って美容室経営をしたり、何かしらのサービスを提供するというのは自分の中であまり想像ができなかった。ならば、北海道の素材を活かしたプロダクトを作るのはどうだろう? と思いつきました。例えば食やワインの産地や、ホテルの立地といった、地域そのものがブランド価値となって地方創生に紐づいているように、美容分野からも地方創生を見据えることはできないだろうか? と。北海道の素材を使った化粧品を作る、そう決めてリサーチしていくうちに、優れた素材はたくさんあるのに、有効活用されていないものがたくさんあることに気づきました。いずれはそれらを利用した化粧品をたくさん作って、北海道のコスメマップを描きたいと思うほど。並行して、化粧品メーカーなどのリサーチも重ねるうちに、ワインの製造過程で余るブドウの皮の成分はどうだろう? という提案を受けました。ワインといえば、その頃はちょうど余市町のワイン産業がものすごい勢いで伸びていた頃で、まさにこれだと繋がったんです。それからは、余市町に足を運び、地元のブドウ農家やワイナリー、行政の方々ともコミュニケーションを重ねました。お話を伺っていくなかで、余市の方々のものすごいエネルギーに感銘を受け、一緒にプロジェクトを良い方向に進めていくことができました。こうしてワインの製造過程で余るブドウの皮から抽出した、クロノシャルディという成分の採用にたどり着いたのです」

この成分を活かした満足度の高い使用感を追求することはもちろん、廃棄品を昇華するサステナブルな視点や、製造過程やコンセプトに秘められたストーリー性も魅力となり、ユニークなライフスタイルブランドとして瞬く間に注目を集めた。

「僕の唯一の趣味とも言えるのがホテル巡り。それは、ブランドにも反映されています。プロダクトを作るときに、ホテルのアメニティとして置かれるとしたら……と考えていました。クオリティが高くあることを前提としながらも、性別も年齢もバックグラウンドも異なるビジターすべてが心地よく過ごせるホテルライクなイメージも大事にしていて、だからこそ香りはユニセックスに、使用感も保湿に長けたニュートラルなものを目指しています。そしてありがたいことに、実際に日本各地の有名ホテルのアメニティとして導入いただくことも多く、ホテル好きとしてはとても嬉しい展開に。シグチやヴィラ ブラマーレといった北海道内の名高いホテルとコラボレーションしてオリジナルの香りを作ったり、昨年末からは実際にホテルに誘致するキャンペーン『リトリート ツーリズム』もスタートさせました。プロダクトの販売のみならず、プロダクトをきっかけにして実際に成分の産地である北海道にユーザーを誘致することは、当初思い描いていた地方創生に繋がる大きな取り組みであり、これからの展開にもぜひ期待していただきたいです」

自宅のバスルームにあるプロダクトから、新しい旅のデザインまでをプロデュースし、地域の盛り上げに尽力する田中氏。ライフスタイルブランドを起点とした革新的な取り組みはまだまだ広がりを見せていく。

「実は2021年から、余市町の『ワイナリー夢の森』協力のもと、クロノシャルムオリジナルの限定白ワイン『YUME WINE』というものも開発しています。今年の2月からは、銀座の『BAR GOYA GINZA』でこのワインを使ったオリジナルカクテルを提供したり。オーナーの山崎氏とは元々親交があり、彼がこのお店をオープンさせるときに将来的に何か一緒にできたらと話していて、それが叶った形となります。単なる化粧品ブランドで終わりではなく、もっとユーザーの生活に近い部分に、クロノシャルムは存在していてほしいからこそ、このような少し変わった取り組みをさせていただいております。使用感も成分も香りも良いのは当然、プロダクトの枠を飛び越えて、新しい旅やワインのような飲食の体験にまで導き、化粧品の効果効能だけではなく、経験を通して価値を得られるブランドであり続けたいと考えています」

最後に田中氏自身の展望も伺った。

「これからもいちばん力を入れていきたいのは、現時点ではやはりクロノシャルムを通じた地方創生。いつかはクロノシャルムの世界観にリトリートできる体験型の宿泊施設のようなものをつくりたいという夢もあります。新しい夢を描いていくなかで、美容師からヘアメイクへ、そして経営者、ブランド創設者とキャリアをシフトチェンジしても、“ステップバックしない”というのは自分なりのルール。新しいことを始めるときに、それまで築いたものを切り捨てるのではなく付加価値を与えて、ステップアップしていこうと心がけています」

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CHRONO CHARME

北海道余市町でワインを醸造する際に廃棄される白ブドウの皮をアップサイクルした製品開発を行うなど、美容領域から地方創生を掲げるライフスタイルブランド。

choronocharme.jp


Photo KENICHI SUGIMORI
Edit & Text TOKO TOGASHI

こちらの情報は『CYAN MAN 2024年4月号』に掲載された内容を再編集したものです。